イースター(Easter)を日本語訳にすると「復活祭」。イエス・キリストの復活を祝うお祭りです。
弟子ユダの裏切りで十字架にかけられたイエス・キリストは、ゴルゴダの丘で処刑されますが「3日後に復活する」と予言を残します。
イエス・キリストが復活したことを記念し、それを後世まで伝え続けていくことに加えて、長く厳しい冬の後にようやく訪れた春を祝うのが、この「イースター」というイベントなのです。
キリスト教において、とても大切なお祝いです。
イースターの日は「春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日」とされており、年によって日付が変わる「移動祝日」でもあります。毎年、日付は変わりますが、必ず日曜日に祝うことになっています。
キリスト教圏の外国ではクリスマスと並ぶくらい重要な復活祭も、日本においては4月は新年度や入学式、お花見などの行事と重なることが多く、ハロウィンと比べても、おとなしめのイベントとなっているような印象です。
イースターの伝統
イースターには、クリスマスのようにワクワクするようなお楽しみがいっぱいです。
ひとつひとつ見てみましょう。
イースターエッグ
ゆで卵や、なま卵の中身を抜いたもの、プラスチック製・木製の卵形を用いて、それにペイントします。
シンプルに一色で着色したり、複雑なデザインを描いたり、彫刻をほどこしたりと、国や地域によって様々な装飾の種類があります。
卵は新しい命、子だくさん、再生を表現します。
キリスト教側も、イエス・キリストの死と復活を表現する比喩(メタファー)として卵がマッチするとして、イースターのシンボルになったそうです。
中身が抜かれた「なま卵の殻」とは、聖書に書かれている「女性たちによって見つけられた、空っぽになった墓」の象徴でもあります。卵の殻はイエス・キリストの墓を象徴し、これを割ることは、イエス・キリストの帰還を意味します。
イースターツリー
庭の木や、家の中に持ち込んだ木の枝に、リボンや糸でイースターエッグを吊るします。
その姿からはクリスマスツリーを連想させますが、日本のお正月でよく目にする繭玉(まゆだま)や餅花(もちばな)とも似ているところがあって親近感が湧きますよね。
ドイツやオーストリアには、より多くの数のイースターエッグを吊るし、色鮮やかに装飾することで有名な街もあります。たくさんのイースターエッグが吊るされたその木の姿は、まるで宝石を産み出す木のようでした。
新しい生命の象徴でもあるカラフルなイースターエッグが、葉が1枚も無いさみしげな木の枝を飾り、輝かせる姿からは「復活」をイメージせずにはいられません。クリスマスとは一味違った喜びと祈りが、感じ取れますね。
そして、何世紀にも渡って作られ続けてきたイースターツリーの起源は、不明なのだそうです。
エッグハント、エッグレース
エッグハントとは、いろんなところに隠されたイースターエッグを子供たちが探し出すゲームです。
公園の芝生、原っぱ、庭だけでなく、家の中でもOK。
子供たちはバスケットを持って、イースターバニーが隠した(という設定の)イースターエッグを一生懸命に探します。
エッグレースは、卵運びゲーム。
スプーンに乗せた卵を落とさないようにゴールまで運びます。子供だけでなく大人にも大人気だそうですよ。
イースターバニー
ウサギは、多産で子供をたくさん産みます。
子孫繁栄や豊穣(ほうじょう)の象徴であり、やがて「イースターの野うさぎ」として取り入れられ、イースターバニーというシンボルになりました。
イースターバニーがイースターの朝に、良い子にしていた子供たちのために卵を置いていく、または、イースター前夜にいたずらバニーが卵を隠したなどの言い伝えから、エッグハントが生まれたそうですよ。
世界各国を見渡すと、卵を届けてくれるのはイースターバニーだけでは無いようです。オーストラリアではイースタービルビーが、フランスでは空飛ぶ鐘が運んでくれるようです。
イースタービルビー
オーストラリアでは、ヨーロッパ人が持ち込んだウサギが土地の環境に害を与えた過去があり、ウサギをイースターの象徴として受け入れることは、難しかったようです。
ビルビーはオーストラリアに住む、長い耳と、とがってヒクヒクした鼻、長めの尻尾を持つ、グレーの色した夜行性の小動物。カンガルーのようにお腹に袋があり、そこにビルビーの子供を入れて移動するようです。
このビルビーが「イースタービルビー」として、オーストラリアでは卵やお菓子を持ってきてくれる象徴となっているようですよ。
空飛ぶ鐘
フランスでは空飛ぶ鐘が、卵やお菓子を運んでくれるそうです。空飛ぶ鐘とは、教会にある鐘に2枚の羽が生え、天使のように空を飛ぶ鐘のことです。
フランスのカトリックの伝統では、イースター前の木曜日(聖木曜日)になると鐘に羽が生え、イタリアへ旅立つと言われてます。
教会の鐘はフランス各地から集まります。
もし、羽を生やして飛ぶ鐘の姿が見えるとしたら、それはまるで天使の行進のようにも見えるのではないでしょうか。
羽の生えた空飛ぶ鐘は、イエス・キリストの死をつつしみ、人々の悲しみをイタリアのバチカンへと運びます。鐘は、バチカンに着いて教皇に祝福されたのちに、フランスへ戻ります。
帰り道に空飛ぶ鐘は、卵やお菓子、チョコレートを集めて、イースターの日に空から落としてみんなの庭にばらまくのだそうですよ。
そして鐘は、復活祭の鐘を鳴らす時刻までに間に合うように素早く戻り、お祝いの鐘を響かせます。
イースターブレッド
イースターのお祝いの日には、甘いパンやケーキを食べる伝統が世界各国にあるようです。
パンやケーキには、砂糖漬けにした果物や、アーモンドやクルミなどのナッツ類を入れたり、レーズンやすりおろしたオレンジ、レモンを加えたり、バニラやラムで味付けをしたりと、本当に様々です。
スライスしたチーズを詰めて、甘さとのハーモニーを楽しむ伝統的なパンもあります。
「Христос воскрес」は、イエス・キリストの復活を意味するキリル文字。
ロシア、ウクライナ、モルドバでは、これのイニシャル「ХВ」の文字を入れたお菓子がイースターの礼拝の後に配られ、朝食でみんなで食べるそうですよ。
英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドでは、パンの生地に十字架の模様を切り入れたり、または砂糖衣のアイシングで十字架を描き入れたホットクロスバンズが、よく食べられるようです。
キリスト教徒の人たちにとって、このバンに描かれている十字架は、イエス・キリストの磔(はりつけ)を意味するそうです。イエス・キリストへの深い愛への感謝と祈りをパンに込めているのでしょうね。
こうしてみると、イースターの食べ物ひとつひとつからも、人々の深い祈りの気持ちが感じられてきます。
命の尊さ、ありがたさを魂に刻み込むことで、自分自身の生きている奇跡を感じさせてくれると共に、食べ物の豊かな味からは、ようやく訪れる春の嬉しさを更にふくらませてくれます。
イースターは命の復活、再生を祝う
いかがでしたでしょうか?
春の訪れと共に祝うイースターは、大人から子供、おじいちゃんおばあちゃんみんなで楽しめるイベントでもあります。
イースターの卵やパンから感じてくる時代を超えて紡がれる命の鎖。その命の奇跡を、今回のイースターの記事を書くことによって感じることができました。
ハッピー・イースター(Happy Easter)!(^ ^) 感謝です!